コンビネーション治療(歯周病治療、矯正治療、インプラント・補綴治療)と、生活習慣改善指導によって口腔環境が改善、維持された症例

Before

After
主訴 | 部分入れ歯を作ったが噛みにくい、歯が全体的に揺れてきて噛みにくい。 |
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診断名 | 重度広汎性歯周炎 #25、#45(残根) 予後不良歯 |
年齢・性別 | 初診時60代 |
治療期間・回数 | ・歯周病基本治療~再評価まで 約8回 / 8か月 ・矯正治療 約10回 / 6か月 ・インプラント治療 約11回 / 12か月 |
治療方法 | ① 歯周病基本治療 ~ 再評価 ~ 歯周外科治療 ~ 再々評価 ② 矯正治療による補綴前処置、咬合再構成準備 ( 歯槽骨内の歯根部の位置づけ、角度の微調整 ) ③ インプラント埋入術 |
費用 | ・矯正治療 : 約 ¥73,000 ・インプラント治療 : 約 ¥700,000 |
デメリット・注意点 | ・ 期間が長く、回数・費用がかかる |
備考 | 口腔内検査の結果から患者様に応じた治療計画を立案・説明し安全に治療をすすめていきます。 治療段階ごとにレントゲン撮影や口腔内の規格写真を撮影し資料を保存し、それを元にカウンセリングを行います。段階ごとの治療効果を理解していただき、患者様の希望に沿った治療を提供いたします。 |
治療詳細
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① 初診時・治療介入時~
・全顎的な歯肉炎症が認められ、歯周組織による歯の支持が弱まっており歯肉から出血しやすい状態でした。#25、#45(残根)、#46は支持されている骨が少なく歯肉上に遊離している状態でした。
・左側臼歯部は歯が傾斜しており咬合高径(噛み合わせの高さ)が低下しており、顎位がずれていました。
嗜好品の量も減らすように指導を開始しました。
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初診時レントゲン写真 ⑴
上下臼歯部の1/2程度の垂直・水平的な骨吸収が認められ、#25、#45(残根)、#46は支持されている骨が少ない状態です。
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初診時レントゲン写真 ⑵
初診時デンタル12枚法です。全顎的に垂直・水平性骨吸収で、縁下歯石も認められます。大臼歯部ではすべて分岐部病変が認められました。
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初診時歯周病検査結果
BOP(プロービング時のポケットからの出血)は100%、PCR(プラークコントロールレコード)は80%近くの数値でセルフケアは不十分な状態でした。
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② 歯周病基本治療後 再評価時
・再評価時には全顎的な歯肉炎症が軽減し患者様も口の中がすっきりして歯が磨きやすくなったと喜んでいただきました。予後不良歯の抜歯も行っています。
・左右臼歯部にテンポラリークラウン(仮歯)を仮着して、かみ合わせの挙上、歯軸の微調整を行っております。
・#24番が舌側に転移しているので、部分矯正で適正な位置に戻すこと、そして舌側傾斜している臼歯部を唇側にひきだしBr補綴での治療計画を立てました。このように歯牙を歯槽骨内の適切な位置に矯正移動させることも良好な予後の獲得の要素になります。
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咬合挙上による口腔容積の変化・好転反応
・咬合挙上により舌のスペースが確保されたこと、上咽頭部の拡大効果による呼吸量の変化も得られたと予測されました。
・適切な咬合圧、方向に位置付けることで咬みごごちもよくなり治療効果を実感していただきました。 -
再評価時レントゲン写真
歯周病基本初期治療後には歯槽硬線が明瞭化し、歯根膜腔の拡大が消失し適切な歯周環境・咬合圧が確保されたことが分かりました。
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歯周外科処置(フラップオペ)を再評価後に実地し、大臼歯部を保存できました
以前から違和感を感じておられたということもあり、歯周外科を#27番#26番行いました。分岐部には不良肉芽があり、#27番の口蓋根は根尖部にまで及ぶ骨吸収が確認できました。
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再々評価時の歯周検査結果
BOP30%、PCR45%に改善されました。依然として4mm以上のポケットも認められましたが嗜好品の量も半分に減らすことができました。
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③ 補綴前処置としての矯正治療期間
矯正治療によって歯牙の位置づけを調整し、歯軸を適切な方向に位置付けることで咬みごごちが改善されました。
最終補綴治療(Br)に向けての準備が整いました。
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補綴前処置としての矯正治療期間 ⑵
矯正後5か月経過時の口腔内写真です。右側、上下は最終補綴が入った状態です。上顎前歯部は2~2で仮歯の状態です。
この時期には患者様も口腔内の状況や治療効果、その内容にも詳しくなられており、モチベーションも高くセルフケアも上達、維持されております。
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④ 最終補綴後 ~ 初診から約2年後
Brにより最終補綴を施し咬合が安定しました。清掃性を考慮した補綴物の形態を付与しています。
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最終補綴後のパノラマレントゲン写真
緊密な噛み合わせが得られました。
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⑤ メンテナンス期間 ~ 最終補綴より1年経過
最終補綴から1年経過した時の口腔内写真です。その後の経過は良好で口腔環境が維持されています。PCRは引き続き良好です。
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メンテナンス期の歯周病検査結果
BOP28%、PCR12%でセルフケアが良好な維持されています、大臼歯の分岐部に6mmのポケットが残っていますが無症状でSPT(サポーティブペリオドンタルセラピー)で経過観察を行っていきます。
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⑥ メンテナンス開始約9年後
メンテナンス開始してやく9年後に#14が歯根破折を起こしたため抜歯、インプラント埋入を行いました。
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#14、#15へインプラント埋入 ~ 現在(症例掲載時の令和7年)までメンテナンスを継続中
対合条件もよく、インプラント埋入後はより安定した臼歯部の咬合域が確保されました。
⋆ 今後もメンテナンスを行い、小さな変化を見逃さずに症状が悪化する前に早期発見・早期治療介入を行っていきます。
⋆ メンテナンスを行っている患者様全員に状態が悪化する前の早期の治療介入を行うことを心がけております。
術前~初診時
術後~初診から約3年後の口腔内写真