糖尿病専門医に依頼され歯周病基本治療を行い、HbA1c値の改善が認められた症例

Before

After
主訴 | 歯茎が全体的に腫れていて、食べた物が挟まってしまう |
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診断名 | 重度広汎型成人性歯周炎 |
年齢・性別 | 初診時70代・男性 |
治療期間・回数 | 再評価まで約10か月・10回 |
治療方法 | 歯周病基本初期治療 ・精密検査 ・TBI(歯磨き指導) ・SC (縁上歯石除去) ・SRP(縁下歯石除去) ・再評価 ・メンテナンス |
費用 | 保険診療 |
デメリット・注意点 | 期間が長い |
備考 | 歯周病基本治療検査の結果から患者様に応じた治療計画を立案・説明し安全に治療をすすめていきます。 * 歯周病の悪化により歯周組織内でTNF-α (歯槽骨を代謝減量・体内インスリンの作用を弱めるサイトカイン蛋白) が発生し、体内インスリンの作用を弱めます。その結果血糖値が高値になり、糖尿病が悪化し歯周組織が弱まりさらに歯周病が悪化する悪循環が引き起こされます。 * 糖尿病の治療中の患者様にも徐々に歯周病が糖尿病の相互原因のひとつであることが知られてきていますが、まだこの事実を知らない患者様が多いのが現状と日々の診療で感じています。 |
治療詳細
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① 初診時・治療介入時~
全顎的な歯肉の炎症が認められほぼすべての歯茎に真性ポケットが認められました。ご本人も常に口の中が気持ち悪いと訴えており歯肉からの出血・浸出液によって口臭も認められました。初診時の患者様のHbA1c 9.0でした。
* HbA1c: 過去2か月程度の血液中の糖分の状態を評価する糖尿病の指標、多くの方の目標値は7.0%未満
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初診時検査結果
全歯に真性の歯周ポケットが認められ出血が認められました。PCR(プラークコントロールレコード)が100%でセルフケアが十分でない状況でした。 BOP約90%
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② 歯周病初期治療後~
全顎的な歯肉の炎症が無くなり歯茎が引き締まり、辺縁歯肉の角化現象が認められました。セルフケアの習慣もでき、患者様も口の中の気持ち悪さが無くなったと喜んでいただきました。
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再評価
PCR、BOPともに20%代になり口腔環境が改善できました。一部4mmのポケットが残存してますがSPT(サポートティブペリオドンタルセラピー)で経過観察していきます。
*┌7(左下第二大臼歯)はポケットが残存していますが無症状で、患者様の希望もあり細目にレントゲン撮影で状態のチェックを行い経過観察しています。 -
再評価時レントゲン写真
歯槽硬線が明瞭化し、長年歯周組織にあった炎症が減少し組織が安定した状態になったことが分かりました。
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③ 定期健診時~
再評価後も定期健診を続けてもらい安定した口腔環境が保たれており、患者様のQOLの向上に大きく寄与できました。定期健診時にはHbA1c値が7,5前後で安定しており歯科の歯周病治療と糖尿病専門医による血糖コントロール治療が奏功しています。
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定期健診時の約2か月毎のHbA1c値の推移
定期健診時はHbA1c値が7,5前後で安定しています(定期健診を開始して2年目のデータ)。
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歯周病と糖尿病の相互関係について
* 歯周病の悪化により歯周組織内でTNF-αが発生し、体内インスリンの作用を弱めます。その結果血糖値が高値になり、糖尿病が悪化し歯周組織が弱まりさらに歯周病が悪化する悪循環が引き起こされます。
初診時からの口腔環境の推移
* 今後も定期健診を続けていきPC(プラークコントロール)の維持と更なる向上、加齢に伴いPC下げないを目標にしていきます。又、生活習慣の把握としてHba1cをチェックしていきます。